Wednesday, April 2, 2008

オペラ番外編〜パリ〜


3月29日オペラ座バスティーユ

ヴォツェック(アルバン・ベルク、1925年)

ヴォツェック:サイモン・キンリーサイド Simon Keenlyside 
鼓手長:ジョン・ヴィラーズ John Villars
アンドレアス:デイヴィッド・クーブラー David Kuebler
大尉:ゲハルト・ジーゲル Gerhard Siegel
医者:ローランド・ブラハト Roland Bracht
マリー:アンジェラ・デノーク Angela Denoke
マルグリート:ウルスラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイエン Ursula Hesse von den Steinen

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評価:✩✩✩✭✭

20世紀を代表するオペラと言われている、ベルクの「ヴォツェック」を観てきました。パリのオペラ座バスティーユは、外観/内装がとてもモダンで、洗練された雰囲気でした。

キンリーサイドは、調子がいいときと悪いときの幅が激しい予想のつかないタイプの歌手なので、当日までドキドキしましたが、初ヴォツェックを90分間難なく歌いきってくれ、とても印象に残りました。他の歌手達も一様にハイレベルだったように思います。

新演出のプロダクションとあって、楽しみにしていましたが、幕を開けてみれば、休憩なしの1時間半+全く舞台転換なしの、かなり観客にとって観づらいもので、大変残念に思いました。ヴォツェックは兵士のはずなのに、何故かマ◯ドナルドと野外テントに発想を得たような安っぽいレストランのウェイターになっていて、その発想はとても面白いものの、全体を貫く強い表現性があるわけでなく、何となくアイディアだけで突っ走ってしまったようなばらばらな印象でした。
オペラ歌手はどれだけ演技が上手くても俳優ではないと痛感させられたのが、マリーと鼓手長のセックスシーンで、ただただ観ているコチラが心地が悪くなってしまって、せっかくのシーンが台無しでした。これは歌手たちに落ち度がある訳ではなく、オペラと演劇の根本的な違いから来ているのだと思います。演出家がそれをよく考慮していないと、中途半端な演技になってしまい(というか、基本は歌手ですからね…)そのシーンが確信性を欠いてしまうように思いました。
ベルクは、無調性と調性音楽を上手く噛み合わせて、このどろどろとした暗い主題を表現していますが、特に、マリーが心をかき乱されるような美しい旋律のオーケストラを伴奏に、呟くように平淡に歌うところが印象的に残りました。幕が下りた後に、「あ〜楽しかった!」と幸せな気分になれるオペラでは決してないですが、いろいろと感じ考えさせられるものがあるという所にこの"20世紀を代表するオペラ"の価値があると思います。



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