Saturday, March 22, 2008

Wigmore Hall ウィグモア・ホール、リサイタル

3月19日、ウィグモア・ホール、リサイタル

フィリップ・ラングリッジ(テナー)、ハナ・エスター・ミヌティッロ(メゾ)&アンドラス・シフ(ピアノ)

’歌:ことば、ありとなしと’

ヤナーチェク〜生い茂った小道にて
ドヴォルジャーク〜ジプシーの歌
スメタナ〜3つの詩的ポルカ
ヤナーチェク〜消え去った者の日記

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London Pianoforte/Song Recital Series

'Songs - With and without Words'

Leoš Janáček ~ On an overgrown path (Po zarostlém chodníku)
Antonín DvořákGypsy Songs (Cigánské melodien)
Bedřich Smetana ~ Torois polkas poétiques Op. 8
Leoš Janáček ~ Diary of one who disappeared (Zápisník zmizelého)


András Schiff piano
Hannah Esther Minutillo mezzo-soprano
Philip langridge tenor
The Geoffrey Mitchell Choir

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評価:✩✩✩✭✭

一言でいうと、シフのすごさを体感したコンサートでした。ピアニストとして揺るぎないキャリアを積み重ねてきた彼が、伴奏者として’ことばのある’歌を支えつつ、’ことばのない’歌を奏でる、、、そんな贅沢なコンサート。チェコ語で書かれたということと、主人公のテナー、相手役のメゾ+女声コーラスの大所帯が必要なので、ほとんどで生で聞くことのできないヤナーチェクのソングサイクル「消え去った者の日記」は、最後の最後でテナー殺しのハイCが二度も出てくる、かなり難易度の高いサイクルです。ラングリッジは、何年か前にレコーディングをしていますが、相変わらず衰えの見えないすばらしい舞台でした。ただ歌が素晴らしいだけでなく、天性の演技力を随所に発揮して、60をゆうに超えているとは思えない、若々しい演奏が、それを支えるシフの秀逸なピアノによって、何十倍にも倍増されたように感じ、ただただその世界に感嘆しました。

ドヴォルジャークのジプシーの歌は7曲からなり、4曲目の「我が母の教えたまいし歌」は、日本でも特に良く知られています。メゾのミヌティッロは、緊張感からか少し声が硬いように思いました。「消え去った者の日記」では、官能的な女ジプシーを堪能させてくれたので、ドヴォルジャークももう少し(いわゆる)ジプシーらしさを見せてくれたらなお良かったと思い残念でした。







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Monday, March 17, 2008

At Leeds Town Hall 〜リーズ・タウン・ホールにて〜



ベートーヴェン:ハ長調ミサ (Mass in C) 2008年3月15日
出演:
Manchester Camerata
Leeds Festival Chorus
Simon Wright (conductor)
Lisa Milne (soprano)
Margaret McDonald (mezzo soprano)
Andrew Murgatroyd (tenor)
Ronan Collett (bass)

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評価:☆☆☆★★
ハ長調ミサは、上演時間45分あまりで、コンパクトにまとまった印象を受けました。コンサート自体は、このミサが後半で、
前半には、2006年に初演された、ジェームズ・マクミラン (James McMillan)のアカペラ合唱曲、"祈り Invocation"と、シューベルトの第5番交響曲が演奏されましたが、私は事情があって残念ながら後半のみ聴くことができました。
ソリストたちは、いずれも確かなテクニックと美しい声の持ち主で、オーケストラ、合唱とのバランスもよく楽しめました。リサ・ミルンは、ヨーロッパ・アメリカなどで第一線で活躍中のソプラノなので、興味を持って聴きました。均整のとれた豊かな声ながらテクニックの細やかさが際立っていました。男声パートのアンドリュー・マーガトロイドローナン・コレットは、どちらも暖かみのある美しい声で安定した歌唱を聴かせましたが、いちばん印象に残ったのは、メゾのマーガレット・マクドナルドのパワーのあるそれでいてビロードのような声でした。
ハ長調ミサは、合唱の持つパワーを存分に生かしたベートヴェンらしい(ちょっと間違えば、やたらと騒がしいだけの)ミサなのもあって、ソリストの役割があまり大きくないので、それが少し残念でした。
しかし、さすがにヴィクトリア時代以降に爆発的に火がついたアマチュア合唱の伝統がまだ生きている英国らしい、パワーにみちた演奏をみせてくれたリーズ・フェスティバル・コーラスを堪能しました。休憩時間に、コーラスのメンバーが、観客と自由に歓談している様子が、印象的でした。
リーズのタウン・ホールは、建築された当時は、ヴィクトリア・ホールと呼ばれました。今でもヴィクトリア調の豪華な内装は一見の価値ありです。

Tuesday, March 4, 2008

イギリスの作曲家たち

今は、音楽といっても聞き手専門になってしまいましたが、少し前までは、声楽という音楽を奏でる側にいました。そんな訳で、どうしても自分の経験と照らし合わせてしまうのですが、私にとっての大ショックは、留学するまで全くイギリス人の作曲家を知らなかったことでした。
特に歌曲の分野では、イギリス歌曲は、まだまだ日本に知られていないように思います。ヘンデルの後、19世紀末までこれといった作曲家が出てこなかったからかもしれません。その頃ドイツでは歌曲まっさかり、ついでに日本にも輸出されてますよね。
留学しなかったら出会わなかった彼ら。その魅力を少しずつ紹介していきたいと思います。

さて第一回は、ジョージ・バタワース(George Butterworth)のソングサイクル『シュロプシャーの若者による6つの歌(6 songs from A Shropshire Lad)』です。

バタワースは、1885年にロンドンに生まれ、1916年、第一次大戦中ソンムの戦いで31歳の若さで世を去りました。生前彼は、フォークソング(とモリスダンス Morris Danceはこんなダンス!)の収集保存に情熱を捧げるかたわら、A.E.Housman(ハウスマン)の詩による、一連の歌曲などを作曲しました。中でも、「シュロプシャーの若者による6つの歌」は、旋律の美しさ、繊細さ、詩とのハーモニーの絶妙さが秀逸です。

1 いちばん美しい木
Loveliest of trees 

2 私が21歳だったとき
When I was one-and-twenty

3 どうか僕の目をそんなに見つめないでほしい
Look not in my eyes

4 それ以上考えないで、若者よ
Think no more, lad

5 たくさんの若者たちが
The lads in their hundreds

6 僕の馬たちは、働いているだろうか?
Is my team ploughing?

ソングサイクルとしては、小規模ですが、それぞれの歌がまるで希少な宝石のような歌曲集です。6曲目は、まるでシューベルトのドッペルゲンガー(Der Doppelgaenger)に匹敵するようなドラマチックな幕切れです。




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