Wednesday, April 30, 2008

Wigmore Hall ウィグモアホール、コンサート

4月29日 ウィグモア・ホール Wigmore Hall

ヘンリー・パーセル:
来れ、芸術の子よ Come ye Sons of Art

ダイドーとエネアス Dido and Aeneas(コンサート形式)

ダイドー:サラ・コノリー Sarah Conolly 
エネアス:ローナン・コレット Ronan Collett
魔法使い:ダニエル・テイラー Daniel Taylor 
ベリンダ(侍女)/魔法使い1:エリン・マナハン・トーマス Elin Manahan Thomas
魔法使い2/第二の侍女:ジュリア・ドイル Julia Doyle

アンサンブル:ガブリエリ・コンソートGabrieli Consort & Players
指揮:Paul McCreesh

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評価:☆☆☆☆☆

「来れ、芸術の子よ」は、初めて聞きましたが、声楽アンサンブル曲でソロと二重唱が上手くアレンジされ楽しめました。が、今日の目当ては「ダイドーとエネアス」でダイドーを歌うサラ・コノリー!後半が待ちきれませんでした。

サラ・コノリーは、ギリシア風の白いドレス姿も優美で憂いがちなダイドーぴったりで、とにかく声が豊かで美しく、もっともっと聴いてみたい歌手の一人となりました。長い間ENO(イングリッシュ・ナショナル・オペラ)で活躍していて、40歳を過ぎた今年やっとコヴェント・ガーデンにデビューする遅咲きの歌手ですが、素晴らしい声の持ち主というだけでなく、人柄もおっとりとして素敵でした。

実力としては頭一つ以上抜けている彼女に対して、若手中心の歌手を回りに集めた今回の人選は、蓋を開けてみれば、大成功だったように思います。エネアスを歌ったローナン・コレットは、若さの溢れた力強さと柔らかみのある歌唱が印象的でした。また魔法使いを演じたカナダ人のカウンターテナー、ダニエル・テイラーは、音楽的に弱い魔法使いのパートを天性の(?)演技力でとても盛り上げて、観客を強力に惹きつけていました。カウンターテナーというより、もっと高い音域の声の持ち主で、ソプラノ歌手が霞んでしまうくらい強烈でした。

ベリンダともう一人の侍女を歌った二人のソプラノ歌手はどちらも、Early Music向きの声で、個人的にはあまり好きなタイプの声ではないのですが、アンサンブルとして良かったと思いました。ガブリエリ・コンソートの演奏も安定していて素晴らしかったです。

ウィグモアホールがここまで満杯になったのは正直初めて見ましたが、観客の反応もとてもよく、イギリスでパーセルなどEarly Musicが人気なのを再認識しました。

ダイドーとエネアスのあらすじについては、またそのうちに。

サラ・コノリーのコヴェント・ガーデンデビューは、ダイドー役らしいので、興味のある方、とてもお勧めです。彼女の名前を一気にポピュラーにした、グラインドボーンでの伝説のジュリオ・チェザーレはこちらからどうぞ!DVDも発売されています。彼女の歌をもっと楽しみたい方、Early Music/ヘンデルに興味のある方には、このCDもお勧めです。



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Thursday, April 17, 2008

Barbican バービカンにて(改訂版)

4月17日 バービカン Barbican 

フラヴィオ、ランゴバルディの王 (ヘンデル、1723年)

Handel: Flavio, re de' Langobardi


指揮:クリストファー・ホグウッド  Christopher Hogwood 

フラヴィオ:イェステン・デイヴィス    Iestyn Davies
グイド:ロビン・ブレーズ                 Robin Blaze
エミーリア:カリーナ・ゴヴァン      Karina Gauvin
ヴィティージェ:メーテ・ボーモン      Maite Beaumont
テオダーラ:レナータ・ポクピッチ      Renata Pokupic
ウゴーネ:ジェームス・ギルクリスト   James Gilchrist
ロターリオ:ジェームス・ラザーフォールド James Rutherford

アンサンブル:古楽アカデミー Academy of Ancient Music

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評価:✩✩✩✩✭

ソリストがそれぞれ良かったです!

コンサート形式なのに、ちょっとしたお芝居がさりげなく織り込まれていて、観客の笑いを誘っていました。バービカンの大きなホールでは、やはり演奏の音が小さめでしたが、それも気にならないくらい、生き生きとした演奏で、とても楽しめました。

タイトルロールのフラヴィオと(ある意味)主役のグイドは、カウンターテナーによって歌われる役なのですが、男っぽい王様のフラヴィオには、強い声のデイヴィスが、ちょっと気弱な(?)青年のグイドには、優しい声のブレーズが、というようにうまく配役されていたように思います。

エミーリアを歌ったゴヴァンは、ピンチヒッターだったらしいのですが、吸い込まれるような美しい声で、それでいて芯の強い女性像がよく表現できていたように思いました。第二幕終わりの、父を許嫁に殺された悲しみを切々を訴えるアリアが特に素晴らしく美しかったです。

あらすじ(ネタ…というほどでもないけれど、ばれてます)

悲劇と喜劇の交錯するこのオペラは、
グイドとエミーリアの悲劇的な愛と、ヴィティージェ(メゾで歌われましたが、オトコです)とテオダーラの秘密の愛とそうとは知らずにテオドーラに夢中になる王様フラヴィオの三角関係という、元々2つの話を元にしてできたそうです。


グイドとエミーリアは、それぞれの父親が王様の腹心の家臣で、二人の結婚バナシがめでたくまとまって…というところからはじまるこのオペラ、


王様が、空きが出たイギリス総督に、グイドの父ウゴーネを、エミーリアの父ロターリオを差し置いて、任命したところから段々と雲行きが怪しくなり、ついにはウゴーネを殴った仕返しにグイドが将来の義理の父を刺し殺してしまいます。

憎い父の敵が、自分の愛するグイドだとしったエミーリアは、復讐と愛の狭間で苦しみ、またグイドも罪の意識に苦しみエミーリアに殺してほしいと頼んだりと、二人とも苦しみますが(短調でゆったりと重苦しい音楽が堪能できます)、王様の賢い判断で、最後には愛が勝ちます。

自分が惚れたテオダーラが実は、家臣のヴィティージェと相思相愛だと発見した王様、広〜い心で、二人の愛を祝福します。っていうか、王様にはお妃様がすでにいるのにテオダーラに「妃に迎えさせてくれ」って言っちゃっていいの?!

そんなばかな!という話もオペラと思えば、楽しいものですね。

今回は3階のバルコニー席で、11ポンドでした。舞台もちゃんと見れたし大満足です。




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Wednesday, April 9, 2008

Colour of the sky 〜ターナーの描く空〜

4月9日 テート・モダン Tate Modern: Turner Gallery

ターナーは、いわずと知れたイギリスを代表する画家です。彼の描く空は、私のイギリスへの第一印象そのものでした。見れば見る程、そこに考えうる全ての色が秘められています。それは柔らかくて翳りがある中にもヒトの気を引きつけずにはおられないパワーに満ちた空です。(写真上は、ナショナル・ギャラリー所蔵)




テート・モダンには、そんな彼の代表作、カルタゴを建設するダイドー 'Dido building Carthage, or The Rise of the Carthaginian Empire'(写真右)
など数々の作品が、実に無造作に展示されています。彼の作品は、展示会に出品されたりして人の目に触れた作品と、彼の死後アトリエに残されていた作品とでは、色合いの強さが格段に違っていて、とても面白く思いました。個人的には、アトリエに残されていた作品の方が、力が抜けていてその分、天然の魅力があって好きになりました。印象派画家といわれるモネが、ターナーの画風をマネ(参考に)したというのもうなずけますが、あくまでもターナーは印象派でなくターナーなのだと思います。

物価の高いロンドンですが、テートやナショナル・ギャラリーなど主要美術館は全て無料なので、気軽にアートに接する事ができるのは、素晴らしい事だと思います。他の国で、ここまで自由に美術館に入れることはほとんどなく、パリなどでは特にセキュリティーも厳しいかったように思います。イギリスに来られる時は、大英博物館だけでなく是非いろいろな美術館&ギャラリーまで気軽に足を運んでみてはどうでしょうか。平日の午前中、お勧めです。テート系列では、金曜と土曜、夜の10時まで開いてます。


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Thursday, April 3, 2008

コンサート番外編〜パリ〜


3月30日
ハープシコード・リサイタル
@テアトル・ドゥ・ラ・ヴィーユ in モンマルトル

アンドレアス・シュタイヤー Andreas Staier (harpsichord)

バッハ:トッカータ ホ短調 BWV914 
スカルラッティ:ソナタ ホ短調 K394
ソナタ ホ長調 K395

バッハ:コラール・パルティータ"おお神よ、慈しみ深き神よ" BWV767
スカルラッティ:ソナタ ヘ長調 K518
ソナタ ヘ短調 K519

バッハ:カプリッチョ〜敬愛する兄の旅立ちにあたって〜 BWV992

スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K141
ソナタ イ長調 K208
ソナタ イ長調 K209

バッハ:トッカータ ニ長調、BWV912
スカルラッティ:ソナタ ロ短調、K87
ソナタ ハ長調、K460
ソナタ ハ長調、K461

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評価:✩✩✩✩✭

ハープシコードによるバッハとスカルラッティ。古楽器の名手シュタイヤーによって、その魅力をたっぷり聴かせてくれました。使用したハープシコードは、実際の古楽器でなく、型を模造して作られた新しい楽器だったようですが、その音の美しさは秀逸でした。ピアノと違って、強弱の調節ができないハープシコードなのですが、シュタイヤーは調節ピン(鍵盤の両端についているもの)をそれぞれの音楽に合うようにこまめに調節して、単調さを免れていました。ハープシコードを演奏する時に、必要な技術の一つが装飾音の加え方なのですが、シュタイヤーの装飾方法は、派手すぎず地味すぎず、それでいてバラエティに富んでおり、観客に飽きさせませんでした。

ドミニコ・スカラッティは、音楽史上でも特異な存在だそうですが、(歴史上にぽつんと現れ、その後継者などは特に見当たらないという意味で)その単純な音楽の中に何とも言えない様式美を見たように思いました。バッハのトッカータは、そのどれもが複雑怪奇なパズルを読み解いていくマジシャンのような演奏で、思わずコンサートにいる事を忘れて身を乗り出して聴いていました。

テアトロ・ドゥ・ラ・ヴィーユは、小さめの規模のモダンな劇場でしたが、スタッフの対応もよく、非常に観やすかったです。

アンドレアス・シュタイヤーの奏でるソナタ イ長調 K208はこちらから聴けます。

Wednesday, April 2, 2008

オペラ番外編〜パリ〜


3月29日オペラ座バスティーユ

ヴォツェック(アルバン・ベルク、1925年)

ヴォツェック:サイモン・キンリーサイド Simon Keenlyside 
鼓手長:ジョン・ヴィラーズ John Villars
アンドレアス:デイヴィッド・クーブラー David Kuebler
大尉:ゲハルト・ジーゲル Gerhard Siegel
医者:ローランド・ブラハト Roland Bracht
マリー:アンジェラ・デノーク Angela Denoke
マルグリート:ウルスラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイエン Ursula Hesse von den Steinen

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評価:✩✩✩✭✭

20世紀を代表するオペラと言われている、ベルクの「ヴォツェック」を観てきました。パリのオペラ座バスティーユは、外観/内装がとてもモダンで、洗練された雰囲気でした。

キンリーサイドは、調子がいいときと悪いときの幅が激しい予想のつかないタイプの歌手なので、当日までドキドキしましたが、初ヴォツェックを90分間難なく歌いきってくれ、とても印象に残りました。他の歌手達も一様にハイレベルだったように思います。

新演出のプロダクションとあって、楽しみにしていましたが、幕を開けてみれば、休憩なしの1時間半+全く舞台転換なしの、かなり観客にとって観づらいもので、大変残念に思いました。ヴォツェックは兵士のはずなのに、何故かマ◯ドナルドと野外テントに発想を得たような安っぽいレストランのウェイターになっていて、その発想はとても面白いものの、全体を貫く強い表現性があるわけでなく、何となくアイディアだけで突っ走ってしまったようなばらばらな印象でした。
オペラ歌手はどれだけ演技が上手くても俳優ではないと痛感させられたのが、マリーと鼓手長のセックスシーンで、ただただ観ているコチラが心地が悪くなってしまって、せっかくのシーンが台無しでした。これは歌手たちに落ち度がある訳ではなく、オペラと演劇の根本的な違いから来ているのだと思います。演出家がそれをよく考慮していないと、中途半端な演技になってしまい(というか、基本は歌手ですからね…)そのシーンが確信性を欠いてしまうように思いました。
ベルクは、無調性と調性音楽を上手く噛み合わせて、このどろどろとした暗い主題を表現していますが、特に、マリーが心をかき乱されるような美しい旋律のオーケストラを伴奏に、呟くように平淡に歌うところが印象的に残りました。幕が下りた後に、「あ〜楽しかった!」と幸せな気分になれるオペラでは決してないですが、いろいろと感じ考えさせられるものがあるという所にこの"20世紀を代表するオペラ"の価値があると思います。