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Monday, October 25, 2010

Pierre-Laurent Aimard @QEH

今年もサウスバンク・センターでのInternational Piano Seriesが始まりました。
オープニングの内田光子さんのはうかうかしているうちに聞き逃してしまいましたが、先日19日、ピエール=ローラン・エマールを聴きにいってきました。

Programme

George Benjamin: Fantasy on Iambic Rhythm for piano
Maurice Ravel: Miroirs for piano
Interval
Fryderyk Chopin: Berceuse in D flat, Op.57
Fryderyk Chopin: Scherzo No.2 in B flat minor, Op.31
Ludwig van Beethoven: 15 Variations and Fugue on an original theme in E flat (Eroica), Op.35

最初のベンジャミンは、現代曲で作曲家自身が列席していたので、終わってから一緒に挨拶してました。個人的には、う〜んという感じの曲でした。ラヴェルの「鏡」は、昔から大好きな組曲だったのですが生で聞くのは初めて。印象画の複雑に絡み合った雰囲気を、いわば打楽器の親戚であるピアノでオーケストラの様に表現という、ラヴェルだからこそできた高等芸術を、同じフランス人エマールは、意外に乾いた音で、でもなめらかに弾いていて印象的でした。
後半は、先シーズンも生誕200周年記念で、いろいろなショパン作品を聴きましたが、この二曲は、やっぱりよくプログラムに入っているのピアニストが好む曲なのでしょうか。
エロイカのテーマによるヴアリエーションは、軽妙ながらもかちっと芯の通った演奏でリサイタルの終わりを締めくくるセンスの良いプログラムでしたが、終わった後、うぁ〜すごかった!という感動はなく、良い意味でリラックス/気分転換できたね、という感じでした。それがいいのか悪いのかは、ちょっと微妙なラインだと思いました。

Thursday, February 25, 2010

ピアノリサイタル@RFH

2月22日 ロイヤル・フェスティバル・ホールにて

International Piano Series

Krystian Zimerman クリスチャン・ツィメルマン

Programme

Fryderyk Chopin: Nocturne in F sharp minor, Op.15 No.2

Fryderyk Chopin: Piano Sonata No.2 in B flat minor, Op.35 (Marche funèbre)

Fryderyk Chopin: Scherzo No.2 in B flat minor, Op.31

Interval

Fryderyk Chopin: Piano Sonata No.3 in B minor, Op.58

Fryderyk Chopin: Barcarolle in F sharp, Op.60


Encore: Waltz C# minor


ショパンの生誕200周年記念の目玉は、現代最高峰といわれる二人のピアニストによるショパンの誕生日コンサート(ショパンの誕生日には、2説あるため)第一弾は、ポーランド出身のクリスチャン・ツィメルマン。何かとエキセントリックな側面にスポットライトがあたり、謎めいたその人柄にも興味津々だったが、初めて見る/聴くツィメルマンは、評判に違わない素晴らしいアーティストで、私にとってはこれまでで最高のコンサートの一つとなった。

満員のフェスティバル・ホールを、天井近くのバルコニー席(なんと£13にて購入!)から見下ろすと、それだけで目眩しそうなくらいだったが、舞台にさっそうと現れたツィメルマンは、自宅にでもいるように、リラックスした表情で最初のノクターンを披露し始める。非常にポピュラーなこの曲は、これまで何人ものピアニストが弾くのを聴いてきたけれど、その全てが遠い遠いかすかな記憶となってしまうくらい、もの凄い演奏だった。テクニックも、表現も、その全てが、まさに現代最高のピアニストにふさわしい。そんなツィメルマンの魔力にいい具合に脳をめちゃくちゃにされた一夜だった。めったにアンコールを弾かないらしいが、誕生日コンサートに敬意を表したのか、ワルツ嬰ハ短調をおまけにさらっと弾いて去って行った。その清々しい去り際から、本物のProfessional魂を垣間みたように思った。


面白いなぁと思うのが、IndependentとかTelegraphに出た、reviewがそこまで評価していないこと。特に、Telegraph Blogでは Krystian Zimerman: what a weirdoというタイトルまで付けられている。いつもながら、超一流の演奏ほど、評価がぱっくり分かれるというセオリーを見せつけられる思いだ。。。 


来週の月曜日(3月1日)は、誕生日コンサート第2弾。マウリツィオ・ポリーニが登場する。去年聴きに行って、そこまで感銘を受けなかったので、今年はパス。その次のリサイタルは、16日のユンディ・リ改めユンディのリサイタル。(てか、「・リ」を取っただけじゃんと思うが、、、)これもオール・ショパンで楽しみです。

Friday, January 22, 2010

ピアノリサイタル@QEH

写真は、Classiquenews.comより

2010年1月19日 クィーン・エリザベス・ホールにて
International Piano Series
Cedric Tiberghien セドリック・ティベルギアン

Fryderyk Chopin:
Scherzo No.1 in B minor, Op.20
Mazurka Op.6 No.3; Op.17 No.2; Op.17 No.4
Ballade No.1 in G minor, Op.23
Mazurka Op.24 No.2; Op.24 No.4
Scherzo No.2 in B flat minor, Op.31

Interval

Alexander Scriabin: Impromptu a la Mazur, Op.2 No.3
Mazurka Op.3 No.7; Op.3 No.6; Op.25 No.3

Aleksander Tansman:
Mazurka, Book.1 No.3; No.4
Mazurka, Book.3 No.1; No.3
Mazurka, Book.1 No.9

Karol Szymanowski:
Mazurka Op.50 No.1; No.7

Fryderyk Chopin: 3 Mazurkas, Op.59
Polonaise-Fantaisie in A flat, Op.61


ショパン生誕200年記念と銘打っただけあって、今シーズンのInternational Piano Seriesは、そうそうたる顔ぶれによるショパンの弾き比べが楽しめそう。

セドリック・ティベルギアンは、このところ話題のフランス人若手ピアニスト。
実のところ、パブリシティー写真での美形ぶりに注目が集まりがちなので、実力は大した事ないんではないか、と疑っていた。

だから、最初のスケルツォを聴いてのけぞるくらいびっくりした。細身の長身を折り曲げる様にして弾き始めるやいなや、その独特で深い世界にぐぐぐっと引込まれ時間が経つのも忘れるくらい夢中になっていた。

彼の持つ世界観がとにかく美しい。技巧的な完璧さや完成度の高さを誇るピアニストは、どうも私の心に響かないらしい。ティベルギアンが特別なのは、アーティストとして、彼の紡ぎだす音楽そのものが、すでにアートとして確立されている凄さ。言葉にすると平凡だけれども、そのタッチの美しさ、低音部の重厚さ、弱音の時の透き通るような静かで襞のある音、高い音楽性。それはきっと持ってうまれた感覚で、いくら技術を磨こうとも、元々持っていない人には絶対に身につけれないものなのではないか。またその持って生まれた才能にとらわれすぎて、技術がそれに追いつかないままプロになってしまったアーティストも多いのに、ティベルギアンは、ちゃんと技術も伴っている本物のヴィルトゥオーゾの可能性も秘めた人。

難を言えば、技術が確かな割にミスタッチが多いところかな。でももしかしたらピアノとの相性が良くなかったのかもしれない。

マズルカ
マズルカはポーランドの有名な民族舞踊(舞曲)形式で、ショパンはその形式を使って沢山の作品を生み出し、マズルカをアートの領域まで高めた人。プログラム後半のスクリャービンやタンスマン、シマノフスキのマズルカは、全てショパンが確立した《マズルカ形式》を継承して書かれたもの。個人的にはタンスマンの耽美的な美しさにため息し、シマノフスキの音調にまたまたうっとりしその気持ち良さについうとうと、、、と非常に気持ちのいい心地にさせてくれた。

ちなみにプログラム前半に披露したショパンのバラードは、クラシックを聴いた事がある人ならおそらく一度は聴いた事があるであろう有名な曲。是非その音の美しさを聴いてみてください。

Monday, November 2, 2009

ピアノリサイタル@RFH

2009年11月1日 ロイヤル・フェスティバル・ホールにて
International Piano Series
John Lill ジョン・リル

Programme
シューマン:子供の情景、カーニバル

ブラームス:二つのラプソディー、ヘンデルの主題による25の変奏曲とフーガより

*********

イギリス人大ベテランのピアニスト、ジョン・リルのリサイタルは、まさに「正統派」というのが相応しいプログラムで、特にシューマンの『子供の情景』は、何度も聴いてよく知っていていても、やはり素晴らしい作品〜〜〜!と久々にザ・クラシック気分に浸らせてもらいました。ほとんど身動きもせず、しゃちほこばった(ように見える)姿勢から生み出される音は、どこまでも軽やかでエレガントでまっすぐ。そして彼の持つ飄々としたどこか超然とした態度は、今はもう引退してしまったアルフレッド・ブレンデルを数年前聴きに行った時に感じたような、職人としてのアーティストを感じました。きっと何十年もこのレパートリーをいろんな所で弾いて来たんだろうなぁ〜と思って聴くと、若手の勢いにみちた演奏とはまた違った重みがひしひしと伝わってきたように思いました。

日曜の午後、しかも天気の冴えない日とあって、残念ながら会場は空席が目立ちました。いつも思うのですが、ピアノリサイタルは、やはりもう少し小さいホールで聴きたいです。せめてもクィーン・エリザベス・ホールまでの大きさでないと、ピアノの音とのintimateな共有が出来ず、なんだか遠いんですよね。個人的には、室内楽には、ウィグモア・ホールが一番と思ってます。

次のInternational Pian Seriesは、来週月曜日、クリスティーナ・オルティズ。本場ブラジル人の彼女が奏でるヴィラ・ロボスに期待です!

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Sunday, October 18, 2009

生のピアノにふれる夜

今年もまたサウスバンクで、International Piano Series が始まりました。若手から大御所までこれほど素敵にセレクトされたシリーズも珍しいでしょう。今年は、ショパン・イヤーだとかで、ショパンの作品を取り上げるピアニストも多いようです。

年末までのラインアップは、こちら↓

1 Nov  John Lill − シューマンとブラームス

9 Nov  Cristina Ortiz − ドビュッシーとヴィラ・ロボス

23 Nov  Louis Lortie − ショパン

4 Dec  Leif Ove Andsnes & Robin Rhode − シューマン、ムソルグスキーとラルヒャーの新作UK premiere

8 Dec  Imogen Cooper − シューベルト

こう見てみると、シリーズ前半は、あまりショパンづけ、という感じではないですね。(苦笑)シリーズ中盤〜後半にどか〜んとくるみたいです。

ショパンといえば、音大の入試試験の際、Chopinがどうのこうの〜と書かれてあるのを和訳するというエイゴの問題で、チョピンが、と訳してしまったらしい友達がいました。その時初めて、ショパンってフランス語読みだった〜〜〜!と知った私たち。。ショパンの出身国ポーランドでは、ナント読むのか気になる所です。「ショパンの練習曲集」なんて巷に出回っているのが、実は、「チョピンの練習曲」だった!なんてことになると、あのエレガントで上品なイメージがガタッと崩れるような気がしませんか?!

それはさておき、Cristina Ortizのコンサートは、lastminute.comにて、50%引きで買えます。(例: £20のチケットが、£10プラス£1の手数料=£11)

サウスバンクは、ロンドンのウォータールー駅近く、または、エンバンクメント駅から橋を渡ってすぐという便利な所にあります。サウスバンク内にあるカフェや、バーなどはコンサート前に一服するのに最適でお勧めです!


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Tuesday, June 23, 2009

久しぶりの更新 (続き。。。)

6月6日 鼓童@ロイヤル・フェスティバル・ホール

久々の日本にどっぷり!
フェスティバルホールの二階席がせり出している後ろの方で聴いたのだが、そのせり出している部分に取り付けられた、照明とか、冷房機とかが、がたがた揺れるのは、初めて経験した。あまりにガタガタするので、途中で落ちてくるんじゃないかとひやひやしたけれど、楽しかった!
ただただ太鼓を叩いているだけの事が、ここまでエンターティメントになるとは、正直予想していなかったので、新鮮な驚きにあふれた素敵な時間だった。


6月8日 ルル@コヴェント・ガーデン

ずっと見たかったルルを、賛否両論のコヴェント・ガーデンプロダクションで、やっと観る事になった。やはりチケットの売れ行きが悪いらしく、ボックスオフィスに電話で予約したら、かなり安く、そこそこの席がとれた。ルル役は、外見的にはルルのイメージにぴったりだったけれど、やはりルルはそんなに甘い役ではないのだなぁ〜というのが正直な感想。途中でだんだんと息切れしてきて、声に艶がなくなってしまい、マイクで拡張されているのがばればれだった。(特に、私の席は、Amphitheatre だったので、まぎれもなく後ろから声が聴こえて来た)ダイアローグの部分は、最初からマイクを通していたのは、演出上と納得していたけれど、普通に歌っているときに、いきなり声が大きくなるのは、、、。ちょっと期待はずれのルルに対して、Dr Shön/Jack the Ripper (切り裂きジャック)を歌ったMichael Volleは、役にぴったりで素晴らしかった上に、イギリス声楽界の大御所Philip Langridgeが、ちょい役で出演して、キラリを光る演技と歌を見せていた。


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Tuesday, June 9, 2009

しばらくぶりの更新

しばらくブログの更新から遠ざかってしまっていたので、3月以来観てきたものをざっとまとめて。。。

3月4日 マウリツィオ・ポリーニ
ピアノ・リサイタル@ロイヤル・フェスティバル・ホール

Beethoven: 
Sonata in D minor Op. 31 No 2 Tempest
Sonata in F minor Op 57 Appassionata

Schumann:
Fantasie in C Op 17

Chopin:
Two Nocturnes Op 27
Scherzo No 2 in B flat minor Op 31

 
言わずもがな技巧派ピアニストの御大ポリーニのリサイタル。
会場から人があふれそうなくらいの超満員は、初めて見た様に思う。その熱狂ぶりに反して、ポリーニのピアノは、あくまでも冷静で、それでいて正確無比な超絶技巧が満開だった。
個人的には、その熱狂ぶりに乗り損ねたかな、、、というのが正直な感想。それでも、エンターテイメントとしては、秀逸したものだったと思う。



4月14日 アンドリュー・バード
Gig@シェパーズブッシュ・エンパイア

こちらは、がらりと変わって、シカゴの個性的なシンガーソングライターによるギグ。
マルチインストゥルメンタリストの彼が、シンプルな音の切れ端を、見事に増幅・反復させて、一つの音楽に創り上げていく様は、想像を超えるインパクトだった。久々に、我を忘れて何かに夢中になれる子供の頃を、追体験させてくれた素敵な夜だった。

5月11日 劇「Waiting for Godot ゴドーを待ちながら

パトリック・スチュワート(Vladimir - Didi)
イアン・マッケラン(Estragon - Gogo) 

ガンダルフとピカード船長による、何もおこらないので有名な劇、と来れば、行かずには済ませられず。チケットは何ヶ月も前に既に完売、劇場は満杯の大盛況でした。早めに予約したのが幸いして、ストールの真ん真ん中で、二人の掛け合いと、引き算の演技を堪能。イアン・マッケランは、文句なしに素晴らしかったのだけれども、それに比べると、パトリック・スチュワートのDidiが、意外に声の線が細い感じで、少し無理していたような。連日の本番で少し疲れていたのかな、と感じた。この話は、見終わった後で、それぞれが感じ取った事をわいわい語り合うのに、最適。静かだけれど、強いインパクトを残した。

5月29日 ロバート・レヴィン
フォルテピアノ・リサイタル@クイーン・エリザベス・ホール

Haydn:
Sonata in E flat
Sonata in C
Variations in F minor (Un Piccolo Divertimento)
Sonata in C minor
Fantasia (Capriccio)

フォルテピアノの演奏は、去年パリでアンドレア・シュタイヤーのコンサートに行ってすっかりその音の虜となったのだが、このアメリカ人ピアニスト、ロバート・レヴィンもとっても良かった。遊び心にあふれた演奏と、ピアノとはまた違った音が生み出す空間が楽しめた。ハイドンは、本当に奥深いとしみじみ感じた。それでも難しい感じではなくて、聞けば聞くほど親しみ深いというか、形式の中で、遊びの要素がぎゅっと詰まっていて、引き出す人の力量次第で、音楽ががらりと変わるのが、面白い。学生時代副科ピアノで、一時期ハイドンのソナタにはまって、そればっかり弾いていたのを思い出した。

Sunday, October 26, 2008

告知:ケンブリッジで有名ソプラノの歌曲コンサート!

ケンブリッジやその近郊に在住の方、今週の金曜日(10月31日)夜8時より、ペンブローク・カレッジのThe Old Libraryにて世界中で活躍中のソプラノ歌手アマンダ・ルークロフトの、歌曲のコンサートがあります。曲目は、チャイコフスキー、シュトラウス、バーバー、ドビュッシーとパンフに掲載されていますが、かなり気楽な雰囲気のコンサートなので、急遽変更があるかもしれません。
入場料:10ポンド(学生は半額)、チケットはThe Porter's Lodgeで購入できると思います。

アマンダ・ルークロフトは、コヴェント・ガーデンや、ENOなど、国内にとどまらず世界中で活躍中のソプラノ歌手です。またオペラだけでなく歌曲のコンサートも精力的に行っていて高い評価を得ています。CDも沢山出ていますが、2007年に発売された"Amanda Roocroft - None but the lonely heart"(写真下、アマゾンより)では、今回のコンサートで歌う予定であろうチャイコフスキー、シュトラウス、ドビュッシーの歌曲が収録されています。

彼女は、20代の前半ですでにコヴェント・ガーデンにてデビューをはたし、それ以来ずっと一線で活躍中ですが、しばらく前に声の調子を崩し、一時は引退まで考える程だったそうです。そんな時、新しい先生にであい、そのお陰でさらにパワーアップして帰って来たらしいので、これから円熟期を迎え、どのような歌を聴かせてくれるのか非常に楽しみな歌手です。


Pembroke College Cambridge

Amanda Roocroft (Soprano) & Joseph Middleton (Piano)

Songs by Tchaikovsky, Strauss, Barber, Debussy...

Friday 31st October 2008
8pm~ @ The Old Library 
Tichkets: £10 (students £5)


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Thursday, October 2, 2008

Concert @ Royal Festival Hall



1st October 2008

Budapest Festival Orchestra

Iván Fischer conductor

Christianne Stotijn mezzo-soprano

Robert Dean Smith tenor

Programme

Schoenberg: Verklärte Nacht (1899, revised for string orchestra 1917 & 1943) 
Transfigured Night 浄夜

Mahler: Das Lied von der Erde (1908-1909)  The Song of the Earth 大地の歌

(i) Das Trinklied vom Jammer der Erde
(ii) Der Einsame im Herbst
(iii) Von der Jugend
(iv) Von der Schönheit
(v) Der Trunkene im Frühling
(vi) Der Abschied
  

*****************************************
☆☆☆☆★

オーケストラの質の高さと、そして指揮者との完璧に息のあった上での集中力の高さがものすごいパワーとなることを実感した夜だった。シャーンベルグの「浄夜」は、初めて聴く作品だったのであらかじめプログラムの解説で、ABACAという楽曲構成であることと、特に有名であるらしい、Cの部分にあたる詩の英訳を読んでいて、より楽しめたように思う。月明かりの下で女がある告白をし、男がそれを許し、ふたりの絆を強めるという話なのだけれど、実際にそのドラマを目の前で見ているかのような音楽だった。A部分は、二人が月明かりの下を散歩している様子、Bでは、心が張り裂けるような哀しみと緊迫感に満ちていて女の告白、そしてAをはさみ、Cでの男の全てを包み込むような愛と理解にみちた言葉があり、またAへと、二人で歩んで行く。Cの音楽は、今まで聴いた中で最も美しく感動的な音楽であったと思う。

休憩後のマーラーの「大地の歌」も、前半に値するくらい素晴らしい演奏だった。特に光っていたのは、テナーのロバート・デーン・スミスと、プリンシパルオーボエ奏者のドゥドゥ・カーメルだった。ディーン・スミスの声は、彼の声域を通じて均一で、特に高音域は素晴らしく、フル・オーケストラをバックに歌っているとは思えないくらい、(時にはそれが大音響で鳴り響いていたりもした)彼の旋律線はとてもなめらかで易々と歌っていたのが印象に残った。オーボエ奏者カーメルのいくつかのソロパートは、とても感情がこもっていて、しかも色彩に富んでいたので、演奏後のお辞儀の時には、ひと際大きな拍手が贈られたのにも納得の演奏だった。
若手のメゾ・ソプラノ、クリスティアン・シュトタインも美しい歌唱で魅せたが、ディーン・スミスに見られたような、声の均一さとなめらかさに欠けていたように思えた。もしかすると、彼女は曲の解釈に熱心になったあまりにごくシンプルに声を繋ぐ、という歌の基本を忘れてしまったのかもしれない。ピアノと歌手だけの歌曲のコンサートだと、解釈ももっと映えたのかもしれないが、フル・オーケストラをバックでは、その効果も半減となってしまったようだった。特に最後の歌「告別」は、30分あまりの長さに加え曲のほとんどが緩やかで静かなため、観客がだれてしまったような印象も受けたのが残念だった。

What an amazing evening! 
There was a palpable feeling of immense concentration from the orchestra. The strong bond between the conductor and orchestral members made the atmosphere so intense and exciting as a result. The orchestra was fantastic. Their playing was dynamic and compelling throughout the evening's performance. I am glad that I read the programme booklet before the performance as it was the first time I have heard Verklärte Nacht. It was fascinating to learn that in composing the piece, Schoenberg followed the structure of the original poem made up of 5 stanzas. (He divided the whole piece into ABACA.) The story is about a young couple strolling together on a moonlit night. The 'A' parts represent their walk and the 'B' part is the painful confession of the woman that she is pregnant with other man's child. The 'C' part is the man's response of love and forgiveness to that confession. It was one of the most beautiful and moving performances of music I have ever heard.   

The English translation of the original poem can be found here.

Mahler's Das Lied von der Erde after the interval was equally wonderful. I thought the stars of the performance were the tenor Robert Dean Smith and the principal oboist Dudu Carmel. Dean Smith's voice was even all way through his range, especially impressive top ranges, his phrasing was so smooth that he made the songs seem easy to sing, despite the fact that he was singing with full orchestra (sometimes playing with their own full sound...) behind him. The principal oboist's numerous solos within the piece were full of emotion and colour, and when he took a bow there was an appreciatively loud applause. 

The young mezzo-soprano Christianne Stotijn sang beautifully but her voice seemed to lack the consistency and evenness of tone that Dean Smith possessed. Perhaps it was because there were more 'interpretations' in her performance than the tenor's. With a full orchestra, however, the many undoubtedly musical effects were lost and lacked the impact she might have anticipated. The last song, Der Abschied, is a particularly difficult song, not only because it is about half an hour in length, but most of the phrases are slow and quiet, indeed there were some moments when she seemed to lose the audience's interest altogether.    

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Monday, June 16, 2008

The radio 3 Lunchtime concert @ Wigmore Hall

6月16日
ラジオ3ランチタイム・コンサート

ジェラルド・フィンリー Gerald Finley    baritone
ジュリアス・ドレーク Julius Drake    piano

曲目:

シューマン
ハイネの詩による歌曲
悲劇・哀れなピーター・きみの頬を私の頬によせて・私の愛はきらめき・きみの顔はとても愛らしくて美しい・わたしのカートはのろのろと

Tragödie I - III • Der arme Peter • Lehn' deine Wang • Es leuchtet meine Liebe • Dein Angesicht • Mein Wagen rollet langsam 

「ミルテの木」より3つの歌
蓮の花・この孤独な涙は何を意味するのだろう・きみは花のようだ

Die Lotosblume • Was will die einsame Träne? • Du bist wie eine Blume 

グリーグ
Op. 48より5つの歌
挨拶・いつか、あぁ私の心よ・世界のありかた・薔薇のときに(甘美な薔薇よ、きみたちは待っている)・夢

Gruß • Dereinst, Gedanke mein •Lauf der Welt • Zur Rosenzeit • Ein Traum

シューマン
ハイネの詩による歌曲
敵対する兄弟たちよ・浜辺の夜・兵士たち・ベルシャザル

Die feindlich Brüder • Adends am Strand • Die beiden granadiere • Belsazar

アンコール
アィヴス
私は恨んではいない Ich grolle nicht
******************************************************
✩✩✩✩✩

ハイネの詩によるシューマンの数々の歌曲は、ドイツ歌曲の演奏会と言えば、定番でもありますが、ジェラルド・フィンリーの少し陰りを帯びた男性的で美しい声で歌われると、恋に敗れる男性の悲哀がひと際濃く出ていて、非常に聴きごたえがありました。

シューマンの「詩人の恋」は創られた当時20曲からなっていて、紆余曲折があって4年後に出版の際、4曲が外されて16曲となったのですが、「きみの頬をわたしの頬によせて、わたしの愛はきらめき、きみの顔はとても愛らしく美しい、わたしのカートはのろのろと」がその4曲にあたり、これらは後年それぞれOp. 142 No. 2, Op. 127 N.3, No. 2, Op. 142 No. 4として出版されました。これらの4曲は、独立した曲としては少しインパクトに欠ける気もしましたが、それぞれ流れるような旋律とピアノ伴奏の美しさが際立っていました。

「ミルテの木」からの3曲は、私的にこのコンサートの中で一番印象に残りました。かなわない恋をこんなにも優しく美しく語れるものなのなのでしょうか。ロバートからクララへの結婚祝いに贈られたこの歌曲集は、幸福感だけでなく恋や愛の不条理さもぎゅっと詰まっていて、彼の盲目的といえる愛が感じられます。

グリーグは、「薔薇のとき」と「夢」が特に有名で、その流れるような美しいピアノ伴奏と相まって、甘美な痛みのようなものを感じさせるとてもロマンチックな曲でした。「夢」は、もはや歌曲というよりはアリアを聴いているような迫力で耳がびりびりしました。

ジェラルド・フィンリーの歌は、旋律線が非常になめらかで、声を自由に扱っている様が、やはり第一線で活躍する歌手たる所以でしょう。オペラだけでなく歌曲のコンサートにも力を入れていて、それもドイツ歌曲からフランス歌曲、イギリス・アメリカ歌曲と、そのどれもがきちんと歌われていて、いつ聴いてもとても満足のいくのが凄いです。

ジュリアス・ドレイクは、大活躍中のピアノ伴奏者ですが、その演奏ぶりは、派手さには欠けるものの、いつ聴いてもテクニックの確かさと解釈の深さには大満足です。イギリスに来て、「ピアノ伴奏者」という位置が、予想していたよりかなり確立されていて驚いたのですが、いくつかのマスタークラスや講習会に参加してみて、彼らの学識の深さとピアニストとしてのテクニックの高さに、非常に感銘を受けました。

このコンサートは、BBC Radio 3のホームページ上で、7日間聴く事ができます。聴いてみたい方はこちらから。(注意!始まって4分くらいからコンサート開始です。)



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Monday, May 19, 2008

A La Battaglia! ~戦いのとき~

5月18日 セント・マーガレット・チャーチにて
St. Margaret's Church, Westminster Abbey

戦いの時!A La Battaglia!

ザ・ウァルフィッシュ・バンド The Wallfisch Band
エリザベス・ウァルフィッシュ Elizabeth Wallfisch
イェステン・ディヴィズ Iestyn Davies

(曲目は前ポスト参照)



*****************************
評価:✩✩✭✭✭

最初に、私のブログの宣伝でこのコンサートにいらした方、ごめんなさい。
私の勉強不足で、てっきり歌のリサイタルかと勘違いして記載してしまいました。

蓋を開けてみれば、イェステン・ディヴィズが歌ったのはたった二曲のみ。そのどちらもがどちらかといえば地味なJohann Christoph Bachの作品だったのは非常に物足りなく残念でした。

アンサンブルのザ・ウォルフィッシュバンドは、この演奏会が、結成以来初めてのコンサートだったそうですが、たしかに変に力が入ってしまって、音楽も落ち着きに欠けていたように思いました。バンドを率いるヴァイオリニストのエリザベス・ウォルフィッシュは、少し音がきつく特に最後の無伴奏では、美しさよりもそれが気になってしまい集中できませんでした。

ただウェストミンスター・アベイ付属のセント・マーガレット教会はとても美しく、雰囲気は満点でした。聴衆の反応もそこそこ良かったので、歌のリサイタルを期待して出かけていっただけに、欲求不満のまま会場を後にした私の方が少数派だったのかもしれません。ビーバーの「戦いの時!」は非常にユーモラスな曲で、また是非聴いてみたいと思いました。






I was totally wrong about this concert! I expected to hear a recital of Iestyn Davies, a very promising young British counter-tenor, instead I sat down to listen to a concert of  many Baroque orchestral pieces with solo obbligato instruments, mostly the violin. 

The band leader, violinist Elizabeth Wallfish, sometimes sounded rather harsh and forced - perhaps it was partly because it was a first ever concert of the band but there were certain moments  in her own solo playing that lacked stylistic consistency. Although there were some beautiful playing by Jorgen Skogmo, Theorbo.

Davies only sang two arias - both by Johann Christoph Bach, the uncle of J S Bach. (See the previous post for the programme)
He sang beautifully throughout both pieces including some very high tessiature (vocal range) in the first song. His voice was free from being tense, strong yet flexible. I would like to hear his singing again but I am not sure I feel the same about the band.




日本語でも英語でもレヴューは初心者ですが、頑張ってぼちぼち鍛えていきますので応援どうぞよろしくお願いします。
↓ ↓ ↓
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Wednesday, April 30, 2008

Wigmore Hall ウィグモアホール、コンサート

4月29日 ウィグモア・ホール Wigmore Hall

ヘンリー・パーセル:
来れ、芸術の子よ Come ye Sons of Art

ダイドーとエネアス Dido and Aeneas(コンサート形式)

ダイドー:サラ・コノリー Sarah Conolly 
エネアス:ローナン・コレット Ronan Collett
魔法使い:ダニエル・テイラー Daniel Taylor 
ベリンダ(侍女)/魔法使い1:エリン・マナハン・トーマス Elin Manahan Thomas
魔法使い2/第二の侍女:ジュリア・ドイル Julia Doyle

アンサンブル:ガブリエリ・コンソートGabrieli Consort & Players
指揮:Paul McCreesh

***************************************
評価:☆☆☆☆☆

「来れ、芸術の子よ」は、初めて聞きましたが、声楽アンサンブル曲でソロと二重唱が上手くアレンジされ楽しめました。が、今日の目当ては「ダイドーとエネアス」でダイドーを歌うサラ・コノリー!後半が待ちきれませんでした。

サラ・コノリーは、ギリシア風の白いドレス姿も優美で憂いがちなダイドーぴったりで、とにかく声が豊かで美しく、もっともっと聴いてみたい歌手の一人となりました。長い間ENO(イングリッシュ・ナショナル・オペラ)で活躍していて、40歳を過ぎた今年やっとコヴェント・ガーデンにデビューする遅咲きの歌手ですが、素晴らしい声の持ち主というだけでなく、人柄もおっとりとして素敵でした。

実力としては頭一つ以上抜けている彼女に対して、若手中心の歌手を回りに集めた今回の人選は、蓋を開けてみれば、大成功だったように思います。エネアスを歌ったローナン・コレットは、若さの溢れた力強さと柔らかみのある歌唱が印象的でした。また魔法使いを演じたカナダ人のカウンターテナー、ダニエル・テイラーは、音楽的に弱い魔法使いのパートを天性の(?)演技力でとても盛り上げて、観客を強力に惹きつけていました。カウンターテナーというより、もっと高い音域の声の持ち主で、ソプラノ歌手が霞んでしまうくらい強烈でした。

ベリンダともう一人の侍女を歌った二人のソプラノ歌手はどちらも、Early Music向きの声で、個人的にはあまり好きなタイプの声ではないのですが、アンサンブルとして良かったと思いました。ガブリエリ・コンソートの演奏も安定していて素晴らしかったです。

ウィグモアホールがここまで満杯になったのは正直初めて見ましたが、観客の反応もとてもよく、イギリスでパーセルなどEarly Musicが人気なのを再認識しました。

ダイドーとエネアスのあらすじについては、またそのうちに。

サラ・コノリーのコヴェント・ガーデンデビューは、ダイドー役らしいので、興味のある方、とてもお勧めです。彼女の名前を一気にポピュラーにした、グラインドボーンでの伝説のジュリオ・チェザーレはこちらからどうぞ!DVDも発売されています。彼女の歌をもっと楽しみたい方、Early Music/ヘンデルに興味のある方には、このCDもお勧めです。



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Thursday, April 3, 2008

コンサート番外編〜パリ〜


3月30日
ハープシコード・リサイタル
@テアトル・ドゥ・ラ・ヴィーユ in モンマルトル

アンドレアス・シュタイヤー Andreas Staier (harpsichord)

バッハ:トッカータ ホ短調 BWV914 
スカルラッティ:ソナタ ホ短調 K394
ソナタ ホ長調 K395

バッハ:コラール・パルティータ"おお神よ、慈しみ深き神よ" BWV767
スカルラッティ:ソナタ ヘ長調 K518
ソナタ ヘ短調 K519

バッハ:カプリッチョ〜敬愛する兄の旅立ちにあたって〜 BWV992

スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K141
ソナタ イ長調 K208
ソナタ イ長調 K209

バッハ:トッカータ ニ長調、BWV912
スカルラッティ:ソナタ ロ短調、K87
ソナタ ハ長調、K460
ソナタ ハ長調、K461

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評価:✩✩✩✩✭

ハープシコードによるバッハとスカルラッティ。古楽器の名手シュタイヤーによって、その魅力をたっぷり聴かせてくれました。使用したハープシコードは、実際の古楽器でなく、型を模造して作られた新しい楽器だったようですが、その音の美しさは秀逸でした。ピアノと違って、強弱の調節ができないハープシコードなのですが、シュタイヤーは調節ピン(鍵盤の両端についているもの)をそれぞれの音楽に合うようにこまめに調節して、単調さを免れていました。ハープシコードを演奏する時に、必要な技術の一つが装飾音の加え方なのですが、シュタイヤーの装飾方法は、派手すぎず地味すぎず、それでいてバラエティに富んでおり、観客に飽きさせませんでした。

ドミニコ・スカラッティは、音楽史上でも特異な存在だそうですが、(歴史上にぽつんと現れ、その後継者などは特に見当たらないという意味で)その単純な音楽の中に何とも言えない様式美を見たように思いました。バッハのトッカータは、そのどれもが複雑怪奇なパズルを読み解いていくマジシャンのような演奏で、思わずコンサートにいる事を忘れて身を乗り出して聴いていました。

テアトロ・ドゥ・ラ・ヴィーユは、小さめの規模のモダンな劇場でしたが、スタッフの対応もよく、非常に観やすかったです。

アンドレアス・シュタイヤーの奏でるソナタ イ長調 K208はこちらから聴けます。

Saturday, March 22, 2008

Wigmore Hall ウィグモア・ホール、リサイタル

3月19日、ウィグモア・ホール、リサイタル

フィリップ・ラングリッジ(テナー)、ハナ・エスター・ミヌティッロ(メゾ)&アンドラス・シフ(ピアノ)

’歌:ことば、ありとなしと’

ヤナーチェク〜生い茂った小道にて
ドヴォルジャーク〜ジプシーの歌
スメタナ〜3つの詩的ポルカ
ヤナーチェク〜消え去った者の日記

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London Pianoforte/Song Recital Series

'Songs - With and without Words'

Leoš Janáček ~ On an overgrown path (Po zarostlém chodníku)
Antonín DvořákGypsy Songs (Cigánské melodien)
Bedřich Smetana ~ Torois polkas poétiques Op. 8
Leoš Janáček ~ Diary of one who disappeared (Zápisník zmizelého)


András Schiff piano
Hannah Esther Minutillo mezzo-soprano
Philip langridge tenor
The Geoffrey Mitchell Choir

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評価:✩✩✩✭✭

一言でいうと、シフのすごさを体感したコンサートでした。ピアニストとして揺るぎないキャリアを積み重ねてきた彼が、伴奏者として’ことばのある’歌を支えつつ、’ことばのない’歌を奏でる、、、そんな贅沢なコンサート。チェコ語で書かれたということと、主人公のテナー、相手役のメゾ+女声コーラスの大所帯が必要なので、ほとんどで生で聞くことのできないヤナーチェクのソングサイクル「消え去った者の日記」は、最後の最後でテナー殺しのハイCが二度も出てくる、かなり難易度の高いサイクルです。ラングリッジは、何年か前にレコーディングをしていますが、相変わらず衰えの見えないすばらしい舞台でした。ただ歌が素晴らしいだけでなく、天性の演技力を随所に発揮して、60をゆうに超えているとは思えない、若々しい演奏が、それを支えるシフの秀逸なピアノによって、何十倍にも倍増されたように感じ、ただただその世界に感嘆しました。

ドヴォルジャークのジプシーの歌は7曲からなり、4曲目の「我が母の教えたまいし歌」は、日本でも特に良く知られています。メゾのミヌティッロは、緊張感からか少し声が硬いように思いました。「消え去った者の日記」では、官能的な女ジプシーを堪能させてくれたので、ドヴォルジャークももう少し(いわゆる)ジプシーらしさを見せてくれたらなお良かったと思い残念でした。







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Monday, March 17, 2008

At Leeds Town Hall 〜リーズ・タウン・ホールにて〜



ベートーヴェン:ハ長調ミサ (Mass in C) 2008年3月15日
出演:
Manchester Camerata
Leeds Festival Chorus
Simon Wright (conductor)
Lisa Milne (soprano)
Margaret McDonald (mezzo soprano)
Andrew Murgatroyd (tenor)
Ronan Collett (bass)

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評価:☆☆☆★★
ハ長調ミサは、上演時間45分あまりで、コンパクトにまとまった印象を受けました。コンサート自体は、このミサが後半で、
前半には、2006年に初演された、ジェームズ・マクミラン (James McMillan)のアカペラ合唱曲、"祈り Invocation"と、シューベルトの第5番交響曲が演奏されましたが、私は事情があって残念ながら後半のみ聴くことができました。
ソリストたちは、いずれも確かなテクニックと美しい声の持ち主で、オーケストラ、合唱とのバランスもよく楽しめました。リサ・ミルンは、ヨーロッパ・アメリカなどで第一線で活躍中のソプラノなので、興味を持って聴きました。均整のとれた豊かな声ながらテクニックの細やかさが際立っていました。男声パートのアンドリュー・マーガトロイドローナン・コレットは、どちらも暖かみのある美しい声で安定した歌唱を聴かせましたが、いちばん印象に残ったのは、メゾのマーガレット・マクドナルドのパワーのあるそれでいてビロードのような声でした。
ハ長調ミサは、合唱の持つパワーを存分に生かしたベートヴェンらしい(ちょっと間違えば、やたらと騒がしいだけの)ミサなのもあって、ソリストの役割があまり大きくないので、それが少し残念でした。
しかし、さすがにヴィクトリア時代以降に爆発的に火がついたアマチュア合唱の伝統がまだ生きている英国らしい、パワーにみちた演奏をみせてくれたリーズ・フェスティバル・コーラスを堪能しました。休憩時間に、コーラスのメンバーが、観客と自由に歓談している様子が、印象的でした。
リーズのタウン・ホールは、建築された当時は、ヴィクトリア・ホールと呼ばれました。今でもヴィクトリア調の豪華な内装は一見の価値ありです。

Tuesday, February 26, 2008

The radio 3 Lunchtime concert at the Wigmore Hall

Radio 3ランチタイムコンサート (2月25日)

プログラム:
バーバー 3つの歌 Op. 10 (1935-6)

ブリッジ 金色の髪 (1925)

バーバー ぽつねんホテル Op. 41 No. 4 (1968-9)
     もう食べてしまったその薔薇は Op. 45 No. 1 (1972)

モーラン ジェームズ・ジョイスによる7篇の詩 (1929)
     
ブリテン W. H. オーデンの詩による8つの歌
                    母のなぐさめ (1936)、夜が堅い大地を覆って(1937)、背中を下に寝転がって (1937)、何を考えてるの? (1941)、太陽の光が (1937)、ほら、充分 (1937)、貴方の想いを表してみたいときには (1937)、さびしい柳のかげで (1936)

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バーバーはアメリカの作曲家ですが、イギリスでも人気があります。モーランは今回初めて聞きました。1894年生まれで1950年没のアイリッシュ系イギリス人です。ロイヤル・カレッジ在学中に第一次大戦が勃発し従軍しましたが、頭部を負傷し帰国後は、カレッジにて教職に就くも、作曲の勉強を続けようと決心し、ジョン・アイランドに師事しました。このジェームズ・ジョイスによる7篇の詩は、当時非常に影響力のあった、ワーロックの影響を受けているといわれています。(Grove Music Online参照)7曲の中では、5曲目のDonnycarneyが、特に緩いテンポでしっとりと歌い上げる旋律が際立っていました。ジョイスの詩集「室内楽」から7篇の詩が選ばれていますが、モーランは「室内楽」での順序ではなく、独自のアイディアで、まるでシューマンの「詩人の恋」のように、若い情熱的な恋〜愛の終わりの淋しさ、というように並べ替えました。

最初のバーバーを歌ったのは、メゾのアン・マリーでした。ハイ・メゾながら安定した低音域を持つ彼女が、高声用で歌っていたのには少し驚きました。そのせいか、全体的に落ち着きにかけていたように感じました。マルコム・マルティヌーのピアノも、普段のコントロールされた美しさがみられなく、特に、3曲目のI hear an army(軍隊がやってくるのが聞こえる)は、かなりの音をミスしていたのが意外でした。


ブリッジの「金髪の髪」とバーバーの2曲は、テナーのフィリップ・ラングリッジでした。彼は声そのものが独特で、好き嫌いの分かれるタイプだと思います。飄々とした風貌で意外におちゃめな演奏ぶりを見せてくれました。Solitary Hotel(ぽつねんホテル)は、特にまるで演劇を見ているようで秀逸でした。
モーランの7曲は、再びアン・マリー。発音があまりクリアーでなく、言葉を聞き取るのが難しかったですが、ミニ・サイクルのようで楽しめました。緩いテンポの曲になると彼女の声の持つ豊穣な美しさが、じわ〜と醸し出されて、大変心地が良かったです。


ブリテンのオーデンの詩による8曲は、詩の中味がかなりホモエロティックなのが多く、その影響もあったのか8曲中4曲以上が、書かれた当時でなく後になって初演・出版されているのが興味深いです。「母の慰め」と「さびしい柳のかげで」は、デュエットで、夫婦で歌われました。二人で同じ舞台に登場することの珍しい夫婦なので、余計に貴重な体験をしたような気分になりました。ホモエロティックな内容も、フィリップ・ラングリッジの手にかかると上質のユーモアになっていました。 


アンコールはブリテンによるフォーク・チューンのデュエット2曲「年寄りおばさん」という、O〜ld woman, o〜ld womanと男声が呼びかけるのが可笑しい歌と、女性が「兵隊さん兵隊さん結婚してよ」と誘うもの、男性は、上等な服がないだの靴がないだのといって、さんざん女性を焦らせておいて、最後の最後に「妻と子どもがいるから、ムリ!」というオチの歌でした。夫婦なのに嫌みのなくて爽やかなデュエットでしたが、この二人、実は再婚カップル。ラングリッジには演出家として活躍する(前妻との間の)息子がいるんですよね。

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