6月16日
ラジオ3ランチタイム・コンサート
ジェラルド・フィンリー Gerald Finley baritone
ジュリアス・ドレーク Julius Drake piano
曲目:
シューマン
ハイネの詩による歌曲
悲劇・哀れなピーター・きみの頬を私の頬によせて・私の愛はきらめき・きみの顔はとても愛らしくて美しい・わたしのカートはのろのろと
Tragödie I - III • Der arme Peter • Lehn' deine Wang • Es leuchtet meine Liebe • Dein Angesicht • Mein Wagen rollet langsam
「ミルテの木」より3つの歌
蓮の花・この孤独な涙は何を意味するのだろう・きみは花のようだ
Die Lotosblume • Was will die einsame Träne? • Du bist wie eine Blume
グリーグ
Op. 48より5つの歌
挨拶・いつか、あぁ私の心よ・世界のありかた・薔薇のときに(甘美な薔薇よ、きみたちは待っている)・夢
Gruß • Dereinst, Gedanke mein •Lauf der Welt • Zur Rosenzeit • Ein Traum
シューマン
ハイネの詩による歌曲
敵対する兄弟たちよ・浜辺の夜・兵士たち・ベルシャザル
Die feindlich Brüder • Adends am Strand • Die beiden granadiere • Belsazar
アンコール
アィヴス
私は恨んではいない Ich grolle nicht
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ハイネの詩によるシューマンの数々の歌曲は、ドイツ歌曲の演奏会と言えば、定番でもありますが、ジェラルド・フィンリーの少し陰りを帯びた男性的で美しい声で歌われると、恋に敗れる男性の悲哀がひと際濃く出ていて、非常に聴きごたえがありました。
シューマンの「詩人の恋」は創られた当時20曲からなっていて、紆余曲折があって4年後に出版の際、4曲が外されて16曲となったのですが、「きみの頬をわたしの頬によせて、わたしの愛はきらめき、きみの顔はとても愛らしく美しい、わたしのカートはのろのろと」がその4曲にあたり、これらは後年それぞれOp. 142 No. 2, Op. 127 N.3, No. 2, Op. 142 No. 4として出版されました。これらの4曲は、独立した曲としては少しインパクトに欠ける気もしましたが、それぞれ流れるような旋律とピアノ伴奏の美しさが際立っていました。
「ミルテの木」からの3曲は、私的にこのコンサートの中で一番印象に残りました。かなわない恋をこんなにも優しく美しく語れるものなのなのでしょうか。ロバートからクララへの結婚祝いに贈られたこの歌曲集は、幸福感だけでなく恋や愛の不条理さもぎゅっと詰まっていて、彼の盲目的といえる愛が感じられます。
グリーグは、「薔薇のとき」と「夢」が特に有名で、その流れるような美しいピアノ伴奏と相まって、甘美な痛みのようなものを感じさせるとてもロマンチックな曲でした。「夢」は、もはや歌曲というよりはアリアを聴いているような迫力で耳がびりびりしました。
ジェラルド・フィンリーの歌は、旋律線が非常になめらかで、声を自由に扱っている様が、やはり第一線で活躍する歌手たる所以でしょう。オペラだけでなく歌曲のコンサートにも力を入れていて、それもドイツ歌曲からフランス歌曲、イギリス・アメリカ歌曲と、そのどれもがきちんと歌われていて、いつ聴いてもとても満足のいくのが凄いです。
ジュリアス・ドレイクは、大活躍中のピアノ伴奏者ですが、その演奏ぶりは、派手さには欠けるものの、いつ聴いてもテクニックの確かさと解釈の深さには大満足です。イギリスに来て、「ピアノ伴奏者」という位置が、予想していたよりかなり確立されていて驚いたのですが、いくつかのマスタークラスや講習会に参加してみて、彼らの学識の深さとピアニストとしてのテクニックの高さに、非常に感銘を受けました。
このコンサートは、BBC Radio 3のホームページ上で、7日間聴く事ができます。聴いてみたい方はこちらから。(注意!始まって4分くらいからコンサート開始です。)
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