Tuesday, February 26, 2008

The radio 3 Lunchtime concert at the Wigmore Hall

Radio 3ランチタイムコンサート (2月25日)

プログラム:
バーバー 3つの歌 Op. 10 (1935-6)

ブリッジ 金色の髪 (1925)

バーバー ぽつねんホテル Op. 41 No. 4 (1968-9)
     もう食べてしまったその薔薇は Op. 45 No. 1 (1972)

モーラン ジェームズ・ジョイスによる7篇の詩 (1929)
     
ブリテン W. H. オーデンの詩による8つの歌
                    母のなぐさめ (1936)、夜が堅い大地を覆って(1937)、背中を下に寝転がって (1937)、何を考えてるの? (1941)、太陽の光が (1937)、ほら、充分 (1937)、貴方の想いを表してみたいときには (1937)、さびしい柳のかげで (1936)

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バーバーはアメリカの作曲家ですが、イギリスでも人気があります。モーランは今回初めて聞きました。1894年生まれで1950年没のアイリッシュ系イギリス人です。ロイヤル・カレッジ在学中に第一次大戦が勃発し従軍しましたが、頭部を負傷し帰国後は、カレッジにて教職に就くも、作曲の勉強を続けようと決心し、ジョン・アイランドに師事しました。このジェームズ・ジョイスによる7篇の詩は、当時非常に影響力のあった、ワーロックの影響を受けているといわれています。(Grove Music Online参照)7曲の中では、5曲目のDonnycarneyが、特に緩いテンポでしっとりと歌い上げる旋律が際立っていました。ジョイスの詩集「室内楽」から7篇の詩が選ばれていますが、モーランは「室内楽」での順序ではなく、独自のアイディアで、まるでシューマンの「詩人の恋」のように、若い情熱的な恋〜愛の終わりの淋しさ、というように並べ替えました。

最初のバーバーを歌ったのは、メゾのアン・マリーでした。ハイ・メゾながら安定した低音域を持つ彼女が、高声用で歌っていたのには少し驚きました。そのせいか、全体的に落ち着きにかけていたように感じました。マルコム・マルティヌーのピアノも、普段のコントロールされた美しさがみられなく、特に、3曲目のI hear an army(軍隊がやってくるのが聞こえる)は、かなりの音をミスしていたのが意外でした。


ブリッジの「金髪の髪」とバーバーの2曲は、テナーのフィリップ・ラングリッジでした。彼は声そのものが独特で、好き嫌いの分かれるタイプだと思います。飄々とした風貌で意外におちゃめな演奏ぶりを見せてくれました。Solitary Hotel(ぽつねんホテル)は、特にまるで演劇を見ているようで秀逸でした。
モーランの7曲は、再びアン・マリー。発音があまりクリアーでなく、言葉を聞き取るのが難しかったですが、ミニ・サイクルのようで楽しめました。緩いテンポの曲になると彼女の声の持つ豊穣な美しさが、じわ〜と醸し出されて、大変心地が良かったです。


ブリテンのオーデンの詩による8曲は、詩の中味がかなりホモエロティックなのが多く、その影響もあったのか8曲中4曲以上が、書かれた当時でなく後になって初演・出版されているのが興味深いです。「母の慰め」と「さびしい柳のかげで」は、デュエットで、夫婦で歌われました。二人で同じ舞台に登場することの珍しい夫婦なので、余計に貴重な体験をしたような気分になりました。ホモエロティックな内容も、フィリップ・ラングリッジの手にかかると上質のユーモアになっていました。 


アンコールはブリテンによるフォーク・チューンのデュエット2曲「年寄りおばさん」という、O〜ld woman, o〜ld womanと男声が呼びかけるのが可笑しい歌と、女性が「兵隊さん兵隊さん結婚してよ」と誘うもの、男性は、上等な服がないだの靴がないだのといって、さんざん女性を焦らせておいて、最後の最後に「妻と子どもがいるから、ムリ!」というオチの歌でした。夫婦なのに嫌みのなくて爽やかなデュエットでしたが、この二人、実は再婚カップル。ラングリッジには演出家として活躍する(前妻との間の)息子がいるんですよね。

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